Column 製造業コラム
◆はじめに
日々、工場の生産ラインや在庫管理に向き合う生産管理担当者にとって、「正確な在庫把握」は永遠のテーマです。
しかし、単に「何が・どこに・何個あるか」を管理するだけでは、万が一の事態を防ぐことはできません。
そこで重要となるのが「ロット別在庫管理」と「ロットトレース」です。
製品の品質保証と自社のブランド信頼を守るために、なぜこの仕組みが不可欠なのか、現場の運用ポイントとともに整理していきます。
◆ロットトレースの目的とは?
ロットトレースの最大の目的は、出荷した製品に万が一、品質上の問題や不具合が発生した際、「どの生産ロット・どの原材料ロットに問題があったのか」を迅速かつ正確に追跡することです。
もし製品のトレース(追跡)ができない場合、影響の有無が判断できず、正常な製品まで含めた広範囲の回収(リコール)を余儀なくされます。
多大な回収費用だけでなく、企業の信用失墜に繋がり、最悪の場合は会社全体の存続さえ脅かされかねません。
逆に、不具合のあるロットを瞬時に特定できれば、被害を最小限に抑え、スピーディーかつ誠実な対応で顧客からの信頼を守ることが可能になります。

◆ロットトレースを実現するための「現場ルール」
ロットトレースを機能させるための前提条件が「ロット別在庫管理」の徹底です。
具体的には、日々の作業の中で以下のステップを正しく実行し続ける必要があります。
- 原材料の受入時:仕入先ロットNo.(または自社の受入ロットNo.)と数量をシステムに登録し、現物に現品票を添付する。
- 生産(製造)時:使用した原材料ロットと生産数量、完成した半製品・完成品の生産ロットNo.を記録し、現品票を添付する。
- 出荷時:出荷する製品のロットNo.と出荷数量を登録し、出荷ラベルを添付して発送する。
常に「実績数量」と「ロットNo.」を紐づけて記録し、現物とデータを一致させ続ける必要があります。
現場の作業負荷が増えるため、運用レベルはかなり高くなります。
◆生産管理システムに求められる要件
運用ハードルが高いからこそ、生産管理システムの機能で現場の負担をいかに軽減できるかが成功の鍵となります。導入・見直し時には以下のポイントが重要です。
1.ロット別在庫管理に標準対応していること
2.ハンディターミナルやバーコードを活用し、ロットNo.の入力ミス・手間を削減できること
3.原材料・生産ロット別の「現品票」や「出荷ラベル」をシステムから即座に発行できること
4.正展開・逆展開のトレース機能を備えていること
正展開:原材料ロットから「どの製品になり、どこへ出荷されたか」を追跡
逆展開:出荷品から「どの原材料ロットが使われたか」を遡及
◆まとめ:ツール活用と「現場の運用体制」の両立が不可欠
どんなに高機能な生産管理システムを導入しても、現場での現品票の貼り忘れや入力漏れがあればロットトレースは機能しません。
真に有効な仕組みを作るためには、システムの導入だけでなく、「現場が迷わず運用できるルールづくりと体制構築」が不可欠です。
ロットトレースの構築には準備と労力がかかりますが、自社の品質管理体制を強固にし、取引先や顧客からの高い信頼を獲得するための重要な投資と言えます。十分な計画をもって、現場と一体となった取り組みを進めていきましょう。


